肝臓の働きその3「脂質の分解・合成」

効率のよいエネルギーとして脂質を利用

油脂や肉類などに多く含まれる脂質は、たんばく質、炭水化物(糖質と食物繊維を合わせた呼び方) とともに「三大栄養素」と呼ばれ、体のエネルギー源として欠かせない成分です。脂質の特徴は、エネルギー効率が非常に高いこと。1 グラム当たり9キロカロリーと、たんばく質や炭水化物の2倍以上に当たるエネルギーを生み出します。

食品からとった脂質は、十二指腸で分解されてから小腸で吸収され、リンパ管などを経由して肝臓へ運ばれます。肝臓では脂質から中性脂肪やコレステロールを作り、血液中に放出します。肝臓から送り出された脂質は、体の各部でエネルギー源として使われます。

また、すぐに必要でない分は皮下や内臓の周りにある脂肪組織に貯えられます。体内のエネルギーが不足すると、貯蔵されている脂肪が肝臓に運ばれて分解され、エネルギー源として消費されます。

体内のコレステロール量を調節する

肝臓で行われる脂質の代謝のなかでとくに重要なのが、コレステロールの合成や分解です。脂質の一種であるコレステロールは、体を維持するためになくてはならない成分です。1日に必要なコレステロールのうち、食物からとっているのはおよそ20% 。残りの80% は肝臓で合成されています。

コレステロールは細胞膜を構成する成分となるほか、さまざまなホルモンや胆汁酸(消化液の一種である胆汁の主成分) の材料にもなります。コレステロールの不足は体に深刻なダメージを与えるため、人間の体には、体内のコレステロール量を一定に保つしくみが備わっています。

コレステロールが不足すると、肝臓で作られるコレステロールの量が増えます。材料となる脂質が足りないときは、たんばく質や糖質から合成することもできます。反対にコレステロールが過剰になると、肝臓で作られる量が減り、排泄される量が増えます。ただし、慢性的に脂質をとり過ぎると、こうした調整機能だけではバランスをとることができなくなり、動脈硬化などの病気や肥満を招くことがあります。

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