英会話の学校が駅前にたくさんあるように、文章力を身につける学校も、もっとたくさん日本にあるべきだと思います。
そもそも、社会人になつてから文章力を上達させる場が日本にはありません。英語なら英会話学校がありますし、会計や法律だったら夜間の大学や専門学校もあります。
しかし、文章は専門学校もありませんし、社会人になってから徹底的に文章術を学ぼうと思っても、どんな学校に通い、何を教わればいいのか、しつかり確立されていないのが現状だと言えます。このように日本は文章に関して需要と供給のバランスが悪い状況なので、社会人になってから文章力を向上させたい人は、独学で学んでいくしか方法はありません。
文章に対してコンプレックスを持っているほとんどの人は、自分自身で文章を書くコツをつかんでいくしかないのです。
まず、文章を上手に書きたければ、読み手を意識しながら文章を書くクセを身につけるのがポイントです。
ほとんどの人が文章を書く際に、「自分が読者」という立場で執筆してしまいます。
これは日本語教育の「作文」というのが、あまり読み手を意識して文章を書かせることを訓練させなかったのが要因だと思います。
誰に向かって文章を書けばいいのか理解していないので、読み手が誰なのかわからない文章を書いてしまうし、分かりづらく自分しか理解できない文章でも、平気で人に読ませてしまうことに慣れてしまったのです。
だから、文章を書く時は必ず、「誰に読ませるか?」というターゲットを決めてから書き始めることにしましょう。ターゲットになる相手は具体的であればあるほどよいのです。会社の上司、社長、同僚、取引先、恋人、母親... ... イメージで個人名が思い浮かぶほど具体的になれば、「こんなことを書けばきっと分かってくれる」という文章
が、自然と書けるようになります。
ラブレターも誰に書くか分からない手紙ではなく、相手を絞って書くからこそ具体的な口説き文句がひらめくと思います。それとまったく同じです。
誰に向かって書いているのか分からない文章ほど、理解されない文章はないのです。
読み手に対して「分かってもらおう」という気持ちがあるからこそ、理解されやすい文章を書くように心がけるし、「面白く読んでもらおう」と考えるからこそ、つかみの書き出しを工夫したり、サービス精神旺盛な文章を書いたりできるのです。
相手を意識して書くと、どれだけ文章力が向上するのか紹介します。
「私たちのホテルでは、6月になると庭園のバラの花がキレイに咲きます」
この一文だけでも書いている内容は理解できます。しかし、このような一文を書いているということは、誰かにこの文章を読んでもらい、ホテルまで足を運んで欲しいという書き手の意図があるはずです。つまり、文章の内容を「理解」してもらうことよりも、「行動を起こしてもらうこと」の方がこの文章で重要なことになるのです。だから、誰に足を運んでもらいたいかをこの文章を通じて具体的にイメージさせない限り、行動を起こしてもらうことはできません。
読み手のターゲットを絞り込むのならば、ホテルの庭園に咲く満開のバラを見学しにくる女性。しかも中高年の女性を頭に思い浮かべるべきでしょう。また、バラに興味があり、わざわざ足を運んでくるわけですから、時間とお金に余裕がある女性であることは容易に想像できます。
「中高年のちょつとリッチな女性」この文章を書く際に、この読み手を頭に思い浮かべて文章を書かなくてはいけません。さらにターゲットになる女性を頭に思い描くのであれば、実在する女性を想像するよゝつにしましょう。友達のお母さんや、知り合いの社長夫人でも構いません。その女性にホテルのバラ囲まで足を運ばせるような文章を書くことができれば、きっと多くのリッチな中高年層の女性を呼び寄せる文章となると思います。私はこの文章を改善する際に、知人の経営者の奥さんを想像して書いてみました。